思考の種

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やる気の枯渇に効く3つの戦術

やる気の枯渇に効く3つの戦術

やる気の正体はウィルパワーである。

やる気の残量というものは実体がなく定義が曖昧であるので、心理学者のロイ・バウマイスターの提唱するウィルパワーという概念に沿って考えていこう。

ウィルパワーを一言で表すと「目標に向けて何かを成し遂げる前向きな力」である。

具体的な例で言い換えると「 タスクリストにある膨大なタスクを遂行するためのエネルギー」「日々の家事を行うエネルギー」「勉強をするエネルギー」であり、 やる気=ウィルパワーと考えて差し支えないであろう。

ウィルパワーを上手に使うには?

ウィルパワーを上手に使うには、ウィルパワーの総量をいかに高めるかだけでなく、いかに消耗させないかも同じぐらい大事である。

では、ウィルパワーは何によって消耗されるのか?

ウィルパワーを消耗させる要因は5つある。 それぞれ見てみよう。

ストレス

ストレスの原因は、人間関係や仕事内容など多岐にわたるがストレスにさらされている間は時間経過と共にウィルパワーを消耗していると考えてよい。

マルチタスク

マルチタスクもウィルパワーを消耗する原因である。マルチタスクをこなす場合、脳は同時に複数のタスクを処理しているようにみえても実際には複数のタスクを切り替えながら処理しているのである。 自転車を漕ぐにしても、電化製品の電源を入れるにしても、あらゆることの初動には最も多くのエネルギーを要する。 これは脳においても例外ではない。 マルチタスクでこまめに処理を切り替えるということは、それだけ処理の初動を増やすことでありウィルパワーを激しく消費するのも当然と言える。

労働

労働もストレス同様に時間経過と共にウィルパワーを消費していく。 連日残業が続くなどすると慢性的なウィルパワー不足になることもあるので注意が必要である。

血糖値の低下

ウィルパワーの原料は睡眠とブドウ糖である。 ブドウ糖の不足は低血糖状態を誘発し、それはウィルパワー不足へと直結する。

決断

これは人生を左右する大きな決断から、レストランのメニューを選ぶ小さな決断まで日常の生活でも様々なものが存在する。 生産的であるためには大切な決断にウィルパワーを投入し、その他の事には極力ウィルパワーを使わないようにすることである。 スティーブ・ジョブズがいつも同じ服を着ることで無駄にウィルパワーを消費しないようにしていたことが好例である。

このようにウィルパワーを消耗させる要因は日常生活の中あらゆるところに潜んでいるので、ウィルパワーの消費を節約しつつ不足に陥ってしまった時には速やかに回復させる手段を身につけることが大切である。

戦略的にウィルパワーを回復する。

仕事中に眠気や空腹感、ネットサーフィンなどの誘惑を感じるのはウィルパワー枯渇のサインである。 そして、それらの誘惑に乗ることは睡眠や糖分補給、ストレスから注意を逸らす行為であり、ウィルパワーを回復させる手段と繋がっている。 だからといって欲求のままに誘惑に乗ることは賢明とは言えない。

同じ休憩をするにしても戦略的にいこう。

誘惑に負けてとる休憩は受け身であり罪悪感が残るため、セルフイメージを下げるという結果に繋がる。 それでいてウィルパワーの回復効果はそれほど高くない。

逆に戦略的な休憩では、主体的な行為であるため自己肯定感が高まり、セルフイメージを高めるという結果に繋がる。 そして、計画された休憩であるため効率的にウィルパワーを回復させることができる。

では、ウィルパワーを保つための具体的な戦術について見ていこう。

ウィルパワーを維持するための3つの戦術

ウィルパワーは睡眠とブドウ糖によって作られる。 これが一般的に午前中は生産性が高い時間と言われている理由だ。 よって、ウィルパワーの回復を考えるにあたって睡眠と糖分補給は必須の要件である。

パワーナップでウィルパワーを回復させる

戦術の1つめは睡眠によるウィルパワーの回復だ。

パワーナップと呼ばれる短時間睡眠による脳内メモリの解放法がある。 これは平たく言えば「昼寝」である。 ただし、科学的に研究された昼寝ということがポイントだ。 理論的にはスリープ・イナーシアを回避するための睡眠として…とあるが、簡潔に言えば「頭がスッキリして気持ち良く起きられる睡眠時間で昼寝する」ということだ。

やり方は至って簡単。 20分後に目覚まし時計をセットして仮眠する。 以上。 更に効果を高めるために仮眠の直前にコーヒーを1杯飲むというのもある。 これはカフェインの効果が20分後に効いてきてより目覚めを促進させるためである。

パワーナップにおいて大切なことは30分以上寝ないこと。

30分以上寝てしまうとスリープ・イナーシアという睡眠の惰性が発生してしまい気持ち良く起きられないのである。

パワーナップは実際に行うと、その効果の高さに驚く。 20分間の睡眠であっても長時間しっかり眠ったような感覚で頭がスッキリしているのがよく分かる。 私はパワーナップがウィルパワーの回復効率が1番高いとも感じている。

低GI食品摂取でウィルパワーを回復させる

戦術の2つめは低GI食品摂取でのウィルパワーの回復だ。

前述のようにウィルパワーの原料として糖分補給は必須である。 糖分補給の速効性だけで見れば吸収の早いブドウ糖が1番なのであるが、戦略的に1日の生産性を高めるという観点から見ると低GI食品と呼ばれている食品がよい。

ブドウ糖が最善でない理由は血糖値の上昇速度による。 ブドウ糖は吸収が早く急激に血糖値が高まるため、体が高まった血糖値を下げるために膵臓からインスリンを分泌する。 インスリンによって血糖値が下げられることで結果的に短時間での血糖値の上下変動が生じる。この生理作用はウィルパワーにとっては好ましいものではない。 理想は安定して少しずつ糖分補給を行うという状態である。 だからといって5分ごとにブドウ糖を少しずつ摂取するというのは非現実的である。

ここで低GI食品の出番である。

GI値とは、その食品が体内で糖に変化し、血糖値をさせる上昇スピードを表す指標のことであり、低GI食品はそのスピードが低いもののことである。 つまり、低GI食品を1回摂取することでブドウ糖を少しずつ何度も取り続けるのと同様の効果を得ようというわけだ。

間食でウィルパワーを補給するのに適した低GI食品としてはナッツ類がよい。 ちなみにダイエットにも使用される。 摂取量としては片手に収まる程度が目安だ。

マインドフルネスでウィルパワーの浪費を抑える

戦術の3つめはウィルパワーの浪費を抑えるためのマインドフルネス瞑想だ。

この戦術は前述の5つのウィルパワー消耗原因のうち、ストレスとマルチタスクに対して特に効果を発揮する。

マインドフルネス瞑想は仏教の瞑想などをベースにし、宗教色を排した心のエクササイズの一種で、集中力の向上やストレス軽減効果が期待されている。

マインドフルネスでは何をするのか?

マインドフルネスの大切な特徴の1つは、「今の瞬間」に意識を向けることです。

グーグルのマインドフルネス革命―グーグル社員5万人の「10人に1人」が実践する最先端のプラクティスより

マインドフルネス瞑想のやり方は、座禅を組むなどして、呼吸に意識を集中させる。 途中で様々なことが頭に浮かぶが、気にせず再び呼吸に意識を戻す作業を繰り返す。 これを1日10~30分、3~7週間続けると思考や感情をコントロールしやすくなる。

そのほかに心に浮かんだことを言語化する「ラベリング」、それをひたすら紙に書き続ける「ジャーナリング」、食べ物の味や舌触りをじっくり観察する「イーティング」がある。いずれも自分の思考や状況を客観的に捉え「今」に集中する癖をつけるのが目的だ。

マインドフルネス状態は究極のシングルタスク状態とも言える。 マインドフルネス瞑想で鍛えた脳は、瞑想後も長い間、マインドフルな「状態」を維持できるようになるので、ストレスやマルチタスクでウィルパワーを消耗するのを抑えることができるようになる。

これらの戦術を1日という時間枠の中で戦略的に活用し、生産性を高めていこう。